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社会医療法人 彩樹グループ
メタボリックシンドロームという言葉を最近、新聞、雑誌でよく見かけるようになっています。メタボリックシンドロームとは、生活習慣病を複数抱えているために、動脈硬化を起こしやすい状態にあることを言います。
生活習慣病とは、日常生活の習慣の乱れのために悪化する病気を示し、高血圧・高脂血症・肥満症などが生活習慣病として有名な病気です。これらは、単独でもそれぞれが動脈硬化を進行させる病気ですが、こういう病気を一つよりも複数同時に持っておられる方が多いことがわかっています。また、生活習慣病の一つ一つは軽くても複数個持っていると動脈硬化が大変進行しやすいこともわかってきました。動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞といった病気になり、命に関わる状態となり得ます。
日本での調査によると生活習慣病の徴候である肥満、高血圧、高血糖、中性脂肪血症、高コレステロール血症の中で、軽症でも2つに該当する人は心筋梗塞の発症リスクが10倍になるそうです。また、3つ以上の人はリスクが30倍以上になります。
では、なぜ生活習慣病は重なって起こるのでしょうか?生活習慣病を複数個持っておられる方の一般像というと、少し肥えていて、味の濃いものをよく食べ、運動はあまりしないという感じでしょうか。このような方のお腹の断層撮影CTを見てみると、腸の周りに脂肪が溜まっていることがわかってきました。これを内臓脂肪と言います。これに対し、皮膚の下に溜まっている脂肪を皮下脂肪と言います。具体的には下図のようになります。
この内臓脂肪が溜まっていることが生活習慣病の原因になっていることがわかってきています。すなわち、メタボリックシンドロームの原因は主に内臓脂肪にあり、その蓄積が生活習慣病を引き起こし、動脈硬化を招くということなのです。
また、内臓脂肪はそれ自身生理活性物質と言われる様々な物質を分泌しており、それ自身が動脈硬化促進に働くということもわかってきています。
2005年日本人でのメタボリックシンドロームの定義が発表されました。
ウエスト(臍部での腹囲径)が、男性85cm以上/女性90cm以上
その中で
以上のうち2項目以上を持つ人をメタボリックシンドロームと診断します。
現在、成人男性のうち2割がメタボリックシンドロームにあたると言われています。
ご自分で上記基準に照らし合わせてみてください。もし、基準に合致するようであれば一度外来を受診して頂き、既に動脈硬化が進行していないかチェックを受けられることをお勧めします。
メタボリックシンドロームは生活習慣病の集合体であるとお話しました。ということは、その治療は、まずは生活習慣の改善であることは明らかです。
(生活習慣の改善方法については、「高血圧について」のページを参考にして下さい)
メタボリックシンドロームにおける生活習慣改善では特に運動療法が効果的です。なぜなら、皮下脂肪と比較して内臓脂肪は運動によって減りやすいことがわかっているからです。
運動前 | 項目 | 運動後 |
---|---|---|
154/92 | 血圧 | 138/86 |
126 | 空腹時血糖 | 108 |
247 | コレステロール | 228 |
284 | 中性脂肪 | 136 |
運動は、歩行運動が最も良いと思います。「一日一万歩」を目標に歩いてみましょう。ただし、それまで運動をしていなかった人が急に始めると関節頭を痛めることもあります。また、血圧コントロールができていない方や、動脈硬化が既に進行している方の場合、重大な心血管病を引き起こす可能性がありますので、一度、医師と相談してから始めるようにしましょう。外へ出るのが困難な場合も、自宅で体操などすることでも良いと思います。
一方、運動療法は大事ですが、食事療法なき運動療法では効果がありません。適正体重を目標に食事量に注意しましょう。よく外来患者様に「何を食べてはだめですか?」と聞かれますが、基本的に食べてはだめなものはありません。しかし、水・お茶以外口に入るあらゆるものにはカロリーがありますので、結局は食べる量で体重はコントロールされるということです。2週間~1ヶ月で体重減少がなければ、やはりカロリー摂取過多であり、全体の食事量(起きてから寝るまで口に入るもの)を減らす以外に方法はないと考えて下さい。
運動療法・食事療法以外で大事なことは禁煙です。メタボリックシンドロームではもともと心血管病の発症リスクが高いわけですから、動脈硬化にとって最も大きな促進因子である喫煙は必ず止めることをお勧めします。