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膵がんについて

概念

膵がんとは一般に膵臓から発生した癌(悪性腫瘍)のことを指します。膵臓は胃の後ろにある長さ15~20cmほどの細長い臓器で、右側は十二指腸に囲まれており、左の端は脾臓に接しています。右側は頭部と呼び、中央を膵体部、左端は尾部と呼びます。

膵臓の働きは主に2つあって、外分泌機能(膵液をつくること)と内分泌機能(血糖を調節するホルモンをつくること)です。膵液は膵臓の中にめぐらされた膵管という細い管の中に分泌されます。細かい膵管は膵臓の中で川の流れのように集まり、主膵管という一本の管になり、肝臓から膵頭部の中へ入ってくる総胆管と合流し、十二指腸乳頭というところへ開口します。膵臓でつくられたホルモンには、血糖を下げるインスリンや血糖をあげるグルカゴンなどがあります。これらのホルモンは膵臓から血液の中に分泌されます。膵がんの90%以上は外分泌細胞から発生します。とりわけ膵管を形作る内側の細胞から発生したがんを膵管がんと呼びます。一般に膵がんといえばこの膵管がんのことを指します。内分泌細胞から発生する膵内分泌腫瘍とはもとの細胞も、症状や経過も全く異なります。これらは出来てきたもとの細胞の名前をとってインスリノーマ、グルカゴノーマなどとよばれ、普通、膵がんとは違ったものとしてとり扱います。

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膵がんの疫学

膵がんは男性のがんによる死亡の第5位、女性では第4位の原因になっており、年間約3万2千人の患者さまに発生し、膵がんで亡くなる人は年に約2万9千人です。わが国では膵がんになる人の数が増加する傾向にあります。膵がんのリスク因子については、背景因子として遺伝、喫煙、肥満や糖尿病などがあり、膵臓の異常所見として膵のう胞性病変や慢性膵炎が報告されています。

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症状

膵がんの臨床症状には腹痛が40%で最も多く、次いで黄疸が15%の患者さまにみられます。その他に腰背部痛や体重減少がありますが、18%が無症状とされています。一方、約半数の患者さまでは膵がん発症の2年以内に糖尿病の発症が見られます。

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血液検査

膵がんによって膵液の流れ道である主膵管が狭窄すると血液中のアミラーゼやエラスターゼといった酵素が上昇します。膵がんで上昇する代表的な腫瘍マーカーにはCA19-9、CEA、Dupan-2などがあります。

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画像診断

1.腹部超音波(エコー検査)

最も簡便で安全かつ有用な検査であり、がんの部分は低エコーとして描出され、膵管拡張、胆管拡張、リンパ節肥大や肝臓への転移等が無いか調べます。しかし、脂肪や消化管ガスの多い人では、膵臓すべてが描出されないため、健診などにおけるエコーによる膵がんの検出率は高くありません。

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2.CT検査

CTはエコーに比べ客観性があり、病変の大きさ、位置や広がりがとらえられます。さらに造影剤を経静脈的に投与することにより病変の血行動態が把握でき、質的診断に欠くことのできない検査法です。また同時に肝臓やリンパ節への転移の有無や、動脈や門脈への血管浸潤も把握できます。

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3.MRI、MRCP検査

MRIは、強い磁石で体内の状態を外部から検査する方法で、CT同様に臓器の断層像を映し出すことができますが、CTと異なりX線を使わないので被爆の心配がありません。MRCPは従来、内視鏡を使って検査していた膵管や胆管を、内視鏡を使わずに低侵襲的に診断する方法で、MRIと同時に行います。短時間の息止めで撮影ができますが強力な磁力を使いますので、体内に金属が入っている方や入れ墨の方は、検査できない事もあります。また閉所恐怖症の方も検査困難です。

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4.内視鏡的逆行性胆管膵管造影法(ERCP)

ERCPは内視鏡を用いて、十二指腸乳頭の膵管(胆管)開口部に細い管(カテーテル)を挿入し、造影剤(ヨード造影剤)を膵管(胆管)に逆行性に注入して膵管像(胆管像)のX線写真を撮る方法です。膵がんは膵管の上皮から発生するため、ほとんどの症例で膵管に変化がみられ、正常な膵管像を呈する膵がんはわずか3%といわれています。また、膵頭部に発生した膵がんでは胆管に影響を及ぼすことが少なくありません。このため、膵管・胆管の直接像が得られるERCPは高い診断能を有します。膵がんに特徴的な膵管所見としては、膵管閉塞、不正狭窄、造影剤の膵管外への染み出しなどがあげられます。同時に膵液の細胞検査を行う事で、癌の診断をつけます。また、がんによる胆管狭窄や、閉塞をきたすと、黄疸の原因となります。

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5.超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

超音波内視鏡とは内視鏡に超音波グローブがついている内視鏡です。EUS-FNAは胃や十二指腸等の消化管から超音波内視鏡で腫瘍を観察し、消化管内から針を刺して組織を採取する方法です。EUS-FNAは、1cm以下の小さな膵癌を早期発見し得る非常に重要な検査です。その正診率は76~93%と報告されています。

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6.ポジトロン画像(PET)

PETは正式名称をpositron emission tomographyといい、比較的新しい画像診断法です。一般的には 18F-FDGという糖の類似体放射性同位元素(人体には無害です)が使われます。 18F-FDGを静脈に注入すると、18F-FDGは正常組織に比べて腫瘍組織内に高濃度に取り込まれます。このため腫瘍部から発する放射線量が多くなり、この放射線をとらえて画像化することにより(画像上、腫瘍部は高輝度となります)、腫瘍の存在を明らかにすることができます。すなわち、PETは腫瘍部での糖の代謝亢進を利用した画像診断法で、他の画像診断とは断とは原理的に大きく異なります。PETは全身検索が簡便にできるため、遠隔転移巣の診断などに有用性が認められます。しかし、CTなどに比べると画像分解能に劣るため、小さな腫瘍の検出には限界があり、腫瘍径2cm以下では68.8%しか検出できないとの報告もあります。また、特殊な操作が必要なため、施行可能な施設が限られますので、当院と連携をとった専門病院で受けて頂いています。

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病期(ステージ)

膵がんは大きさ、膵臓の外への浸潤、リンパ節への転移、肝臓や肺などの膵臓から遠い組織への転移(遠隔転移)によって、5つのステージに分類されます。(日本膵臓学会の分類)

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Ⅰ期

大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しており、リンパ節転移がない。

Ⅱ期

大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しているが、第1郡のリンパ節転移がある。または、大きさが2cm以上あるが、がんは膵臓の内部にとどまっており、リンパ節転移がない。

Ⅲ期

大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しているが、第2郡のリンパ節転移がある。または、大きさが2cm以上あるが、がんは膵臓の内部にとどまっており、第1郡までのリンパ節転移がある。または、がんは膵臓の外へ少し出ているが、リンパ節転移はないか、第1郡までに限られている。

Ⅳa期

大きさが2cm以下で膵臓の内部に限局しているが、第2郡のリンパ節転移がある。または、大きさが2cm以上あるが、がんは膵臓の内部にとどまっており、第1郡までのリンパ節転移がある。または、がんは膵臓の外へ少し出ているが、リンパ節転移はないか、第1郡までに限られている。

Ⅳb期

がんは膵臓周囲の血管におよんでおり、第2郡のリンパ節転移がある。または第3郡のリンパ節転移があるか、離れた臓器に転移がある。


膵がんの取扱には、日本で開発された日本膵臓学会の独自の「膵癌取扱規約」と、世界的に用いられる「UICC分類」があります。最近になって、この2つの規約は共通点が多くなっていますが、膵癌の病期分類に関する研究は、日本が世界で最も進んでいたので、日本の取扱規約がUICC分類よりも詳しく作られています。日本では「膵癌取扱規約」で記録するのが普通です。

膵癌の病期を決めるための因子には、原発腫瘍の局所進展度(T)、リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)があります。

・原発腫瘍の局所進展度(T):腫瘍の大きさ(TS)、膵内胆管浸潤(CH)、十二指腸浸潤(DU)、周囲組織への浸潤(S、PV)、隣接する大血管浸潤(A、PV)、膵外神経叢浸潤(PL)、多臓器浸潤(OO)などの因子で決まります。

膵がんの治療法

膵がんの治療は手術療法、放射線療法、化学療法の3つの治療法が主体になりますが、他、閉塞性黄疸に対してはステント治療などがあります。

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1.手術療法

手術法は膵がんのできている場合によって異なります。膵頭部にがんがある場合は、膵臓から体部の一部、十二指腸、小腸の一部、胆のう、胆管および胃の一部を切除する膵頭十二指腸切除術(下図a)を行います。膵体部や尾部にがんがある場合には、膵臓の体部・尾部と脾臓を切除する膵体尾部切除術を行います。がんが膵全体に及ぶ場合は膵全摘術を行うこともあります。膵がんの病期によっては切除できない場合があります。この時は十二指腸などがつまって食事がとれなくなるのを防ぐために、胃と腸を吻合したり、黄疸が出ないように胆管と小腸をつないだりするバイパス手術を行うことがあります。

2.放射線療法

膵がんに放射線を数回に分けて照射する治療です。多くの場合、放射線の効果を見極めるために少量の抗がん剤を同時に使用するので、放射線化学療法という場合もあります。腫瘍を小さく制御してから手術を行う場合と、切除適応がないために局所をおさえる目的や除痛目的で用いる場合があります。

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3.化学療法

1.ゲムシタビン塩酸塩(GEM、ジェムザール)

GEMとは代謝拮抗薬に分類される抗癌剤です。GEMの生存期間中央値が約5.6カ月でフルオロウラシル(5-FU)群(4.4カ月)に比し有意に延長し、ゲムシタビン塩酸塩群の1年生存率が18%で5-FU群(2%)に比し有意に良好でした。さらに、ゲムシタビン塩酸塩群の症状緩和効果は23.8%で、5-FU群(4.8%)に比し有意に効果が認められたことから、ゲムシタビン塩酸塩単剤が切除不能膵癌患者に対する第一選択薬として位置づけられました。本邦では2001年に保険適応になり、膵癌治療のkeydrugです。GEMの副作用としては骨髄抑制、嘔気や嘔吐、食欲不振、下痢、脱毛等があります。

2.GEM + erlotinib(エルロチニブ:タルセバ)療法

エルロチニブは細胞の増殖因子である上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害する分子標的薬剤です。膵癌をはじめとするがんではEGFRが過剰に発現し、EGFRから細胞内にシグナルが伝達され、増殖することが明らかになりました。エルロチニブはこのシグナル伝達をブロックし、がんの進行増殖を抑える薬剤です。 GEMとの併用療法にて唯一効果を示した薬剤です。この療法の副作用として皮疹、下痢が多く見られ、また日本人では間質性肺炎の頻度が高いことが証明され、十分注意が必要ですが、2011年7月に保険適応となっています。

3.S-1(ティーエスワン)

S-1とは新規経口フッ化ピリミジン系抗癌剤で、FTに他の薬剤を配合し5-FUの組織濃度を高め抗腫瘍効果を高めます。組織でのS-1 は進行膵癌患者を対象にした多施設共同研究試験において奏効率は37.5%で、無増悪生存期間中央値は3.7カ月、生存期間中央値は9.2カ月でした。さらに、その効果を高める目的でGEN(ゲムシタビン)やCDDP(シスプラチン)と併用することもあります。塩酸塩単剤とS-1単剤の比較では生存期間のHRが0.96、97.5%CIが0.78~1.18であり、S-1の副作用としては骨髄抑制、嘔気や嘔吐、食欲不振、などの消化器毒性です。

4.CPT-11(イリノテカン)

CPT-11(イリノテカン)はカンプトテシンという成分を基に、日本で開発された注射薬です。DNA合成に関わるトポイソメラーゼ Ⅰという酵素の働きを阻害することで、がん細胞の増殖を抑えます。 CPT-11 は進行膵癌患者を対象に奏功率は27%、症状緩和率14%で膵癌に対する保険適用が認められました。CPT-11の副作用としては骨髄抑制、嘔気や嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器毒性です。

5.FORFIRINOX療法

2010年フランスで行われた遠隔転移を有する膵癌患者を対象にFORFIRINOX 療法とGEM単独療法との比較試験の結果、 FORFIRINOX 療法では腫瘍縮小効果、生存期間のいずれもGEM単独療法に比して良好でした(図参照)。日本での第Ⅱ相臨床試験でも奏功率約40%と良好な結果が得られ、2013年12月に保険適応が承認されました。 使用薬剤はL-OHP(オキサリプラチン)、CPT-11(イリノテカン)、l-LV(レボホリナートカルシウム)、5-FU以下の副作用出現率が高く、慎重に投与する必要があります。副作用は多剤使用するため、他の薬剤に比べ多く出ます。骨髄抑制、下痢、消化器症状に加えオキサリプラチンによる手指神経障害(手足のしびれや異常知覚)などがあります。

末梢神経傷害
オキサリプラチン(L-OHP)による末梢神経症状は、急性と持続性の2つのタイプがあり、前者は薬剤投与により一過性に出現し消失しますが、後者は蓄積性で用量依存性に発現し、薬剤の減量を要します。

7.ナノ粒子アルブミン結合パクリタキセル (nab-PTX、アブラキサン) + GEM併用療法

アブラキサンは人血清アルブミンにパクリタキセルを結合させナノ粒子かした製剤です。パクリタキセルとGEMを併用し、遠隔転移を有する膵癌患者を対象に実施した比較試験で、その有効性と安全性が証明され、2014年12月、優先審査により治癒切除不能な膵癌の治療に追加承認されました。国内の第Ⅰ/Ⅱ相試験で、全奏功率(ORR)は44.1%、病勢安定(SD)も含めた病勢コントロール率(DCR)は94.1%であり、無増悪生存期間は5.6ヶ月でした。しかしながらこの療法の副作用発現率は100%であり、主なものとして汎血球減少、脱毛、末梢神経傷害、嘔気嘔吐などであり、副作用対策が重要です。

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4.ステント治療

膵がんの浸潤のため胆管閉塞による黄疸には、経皮、経肝的に挿入したPTCDチューブを用いた経路や内視鏡を利用して、X線透視下で胆管の狭い部分にパイプのようなもの(ステント)を留置し、胆汁の流れる経路を作る方法です。これにより黄疸は手術せずに改善することができます。



その他の治療法として、温熱療法、免疫治療、遺伝子治療、粒子線治療などがありますが、現在のところ、その効果は確証できず、積極的にできていないのが現状です。

免疫治療(リンパ球療法)については当院は専門施設と連携をとって行っておりますので、ご要望や質問があれば、担当医にご相談下さい。

当院では、膵がん治療のコンセンサスを参考に、患者さまの病期や全身状態に応じて治療方針を決定し、膵がんの治療にあたっております。

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5.術前放射線化学療法

膵がんは早期に周囲の組織に浸潤して転移を来す事が知られており、手術を行っても直ぐに再発する事が多く、治療成績は未だ満足のいくものではありません。しかしながら、最近になり膵がんに対して放射線と抗がん剤を使用してから手術を行う術前放射線化学療法が良好な成績を収めていると報告されています。当院では平成25年4月より、この治療法の先駆者である大阪府立成人病センター石川 治 名誉院長の協力を得て、本療法を導入しています。

術前放射線化学療法は再発が起きやすい場所にあらかじめ放射線をあて、画像検査では見えないが、散らばっているかも知れない小さながん細胞を抗がん剤でたたいて、再発などのリスクを減らしたうえで手術に臨む手法です。方法は週末をのぞく毎日、5週間で計25回(50 Gy)の放射線をあて、4週間に3回の割合で計9回抗がん剤の投与を基本とします。その後に手術を行いますが、治療経過中に遠隔転移を認めた場合は手術をおこなわずに化学療法へ移行することがあります。

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膵がんの治療実績

1.切除術の成績

膵がんの治療成績は診断時の進行度によって大きく異なります。その悪性度から他の癌より予後が悪いのが現状です。診断時の進行度と切除術後の生存率の関係では、Stageが進行するほど、切除されても生存率は有意に低下します。やはり、早期発見、早期治療が重要です。当院では、1cm以下の膵がんを発見するためのスクリーニング検査を行っています。

(北大阪早期膵癌発見プロジェクト)

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2.非切除時の治療成績

膵がんが切除されなかった場合でも、進行度によって生存率が異なります。StageIVaでの高度な大血管浸潤のために切除が不可能だった場合には、化学療法(抗癌剤)などの治療を行った場合でも生存期間中央値は11.5ヶ月、1年生存率が39.6%です。StageIVb全体では、中央値が4.1ヶ月、1年生存率が9.3%となります。

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